ハムイチの棲み家

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画の感想文 [776] フィツカラルド

<<   作成日時 : 2014/12/21 09:46   >>

トラックバック 0 / コメント 0

【フィツカラルド】
原題:Fitzcarraldo
制作年:1982年(日本公開:2001年2月)
制作国:西ドイツ
監督:Werner Herzog(ヴェルナー・ヘルツォーク)
出演:Klaus Kinski(クラウス・キンスキー), Claudia Cardinale(クラウディア・カルディナーレ)

===== あらすじ(途中まで) =====

 アマゾン川の奥地、ペルーのイキトスで、アイルランド出身のフィツカラルドはその地にオペラハウスを建てることを夢見ていた。しかし鉄道事業や製氷事業に失敗し、恋人である娼館の女主人モリーの勧めで、ゴムの採集事業を始めることにした。彼が手に入れることができる土地はウカヤリ川の上流地域しか残っていなかったが、その途中にはポンゴの急流と呼ばれる難所があって、船で荷を運ぶことは不可能だった。
 だが彼に一つのアイデアが閃いた。大ゴム園主のアキリーノから老朽化した客船を買い上げて改装し、モリー・アイーダ号と名付け、機関士にチョロ、船長にパウル、料理人にウェレケケなどを雇ってイキトスを出港した。
 彼の行く先はウカヤリ川より上流にあるパチテア川だ。しかし遡るうちに両岸から原住民インディオたちの不気味な太鼓や歌声が聞こえ、怯えた乗組員はあらかたボートで逃げ出してしまった。フィツカラルドは臆することなく、対抗するように蓄音機でオペラを流すと、それに引き付けられるように大勢のインディオが姿を現すようになった。やがて彼らは船に乗り込んでくるが、物珍しそうにするばかりで、なぜかフィツカラルドたちを襲おうとはしなかった。
 ついに目的の場所に到着した。そこはパチテア川とウカヤリ川が最も近接している地点だ。フィツカラルドの計画は、モリー・アイーダ号を山の上まで持ち上げ、ウカリヤ川へ降ろしてゴムの採集に使い、採集したゴムは人力でパチテア川まで運んで別の船で出荷しようというものだ。
 しかし船を山越えさせるには人手が足りない。仕方なくインディオの酋長に協力を頼むと、意外なことに引き受けてくれるという返事だった。

画像

===== 感想(ネタバレ) =====

● 二つのネタバレ
 いろいろと試してみたけど、ネタバレなしにこの映画の面白さを表現するのは無理だった。お話も映像もとにかく面白いネタなのだ。
 なお、アマゾンの奥地で大きな船が山を越えるというのはネタバレではないだろう。この映画を語るときに必ず紹介されることだし、DVDのパッケージもそういう絵だ。
 ほぼ人力だけで木々を切り倒してスロープを開き、大きなウィンチをいくつも作って滑車とロープで船を引き上げていく。まともな発想ではない。

 この感想文でのネタバレの一つ目は、インディオ達が重要な目的を持っていたこと。
 彼らはフィツカラルドたちを襲撃しないどころか、むしろ協力的だ。工事中に事故で死者が出ても、弔いのための数日が過ぎれば協力を続ける。でも何か得体のしれない儀式のようなことをしているらしく、船が無事に山を越してウカヤリ川に浮かぶと、毒を用意し、死を覚悟するようなメイクをする。ただの無知蒙昧な未開人といった偏見で見ていると、とんでもないことになる。
 とはいうものの、ここでインディオたちのねらいをズバリと書くのはヤボというもの。ヒントとして、毒は誰かを殺すためではなく、危険に立ち向かう意識を奮い立たせるため、つまり「覚醒」が目的だったらしい。
 最後の夜、顔に死のメイクをした何人かが船に乗り込んでくるのだが、彼らは彼らなりの発想で、自らを犠牲にしてまで地域のために尽くそうとしていたのだ。だからフィツカラルドは彼らに怒りや憎しみを抱くことすらない。
 こうした決着がすごく後味の良いものになるんだよね。

 二つ目は、ラストにオペラが上演されること。
 フィツカラルドは事業に失敗するけど、そんなのこれまでに何度もあったこと。今回は大きな借金を負うこともないようだし、彼はすぐに新しい事業に取り掛かるだろう。へっちゃらだ。
 そんな彼が映画の最後にやってみせたのが、近隣の都市に来ていたオペラの一行を呼び寄せ、愛するモリーのために赤いビロードの特等席を用意することだった。
 その姿の粋なこと!

 どちらのネタも明かされた時、すごくスカっとする。いわゆる「未開」と「文明」の衝突ということで、扱う題材の時代的あるいは地理的な背景などを考えると、得てして重苦しくて糞まじめな内容や悲劇的な結末を想像しがちだけど、そんな映画に仕上がらないところがホンモノの「巨匠」なんだよね。

● アマゾンですが
 同じアマゾン奥地を舞台とした映画ということで、この監督の前作『アギーレ/神の怒り』と対比してみたくなるが、ずいぶんと対称的な作品であることがわかる。
 まずは主役の目的。前作は征服で本作は開発。欧米人そのものが前作は野蛮であり、今回は文明ということになる。前作のような血なまぐさい要素も今回はまったく登場しない。
 したがってインディオとの関係も変わってくる。前作は敵対だったけど今回は協力。ただし協力といっても、相互に利用し合う関係だ。
 次いで移動手段。前作はイカダで今回は客船。これはそのまま主役たちの置かれた状況の不安感と安定感とを対比するものだし、絶望と希望の違いということになる。
 そこに載せられた主要な道具も真逆だ。つまり形状は同じように筒状の道具なんだけど、前作は大砲、本作はラッパ型スピーカーの蓄音機。まさに戦争と平和だな。あるいは殺戮と芸術の対比とか。
 ラストの船上の様子もまったく別物。前作は狂気で本作は狂喜。どちらも「キョウキ」だけど、まったく異なる印象や感動を与えてくれるエンディングだ。
 前作はラストに主役がドヤ顔をし、本作は蓄音機のシーンとラストのシーンで主役がドヤ顔をする。でもその意味はまるで別。前作は力で世界を屈伏させたという妄想のドヤ顔。今回は普遍の力を持つ芸術で未開を豊かにしてやるというドヤ顔。
 比較すると、ほんと面白い。

● 映像の妙
 映像は見事だ。
 特に遠景など、少しカメラが引いたようなアングルが、もう天才的。

 タイトルバックのオペラハウスの外観などのカットもさりげなくすごい。
 大きくカーブした階段をドレスアップした二組のカップルが上って行くと、その向うにオペラハウスの全体像が現れ、絶妙なタイミングでシルクハットの男が画面を横切る。小舟でやってくるフィツカラルドとモリーのカットを挟んで、オペラハウスの正面が完璧なシンメトリで撮られる。「凝ってる絵だなあ」とちょっと感心。
 見事な「つかみ」のイントロだ。

 映画の中盤でフィツカラルドの計画が明らかになるときの樹上の見晴らし台のシーンもすごい。
 実はそれまでの展開で彼のプランは想像がつくのだが、映像として実際に見せられると、そのスケール感に改めて驚いてしまうし、映画のトーンが一挙に変わることになる。つまり、空撮を使うことで、地平線の彼方まで限りの無いジャングルの広がりが彼の発想の途方もなさを感じさせる。そこを流れる2本の川は文明へと続く命綱のようだし、それが近接していることが孤独や孤立感をやわらげてくれる。
 これからの話の展開に対して、まさに一気に視界が開ける瞬間だ。

● 山越え、急流越え
 この映画の最大の見せ場は船が山を登っていくところ。
 う〜ん、こんなことを考える奴はアホじゃ。
 一見すると嘘臭いけど、実際に撮影したというのだから、リアル映像なのだ。
 とにかく圧巻で面白い映像で、必見だな。

 また、船が急流を越えるシーンもある。
 こちらもなかなかの迫力なんだけど、どうしても作り物感が抜けない。でも、ここも完璧にリアルに撮れといっても、そりゃムチャだよね。
 このシーンに登場するインディオさんたちの可愛らしさに免じて、どうか一つ。

● 熟年カップル
 フィツカラルドとモリーはかなりの年配だけど、何とも憎めない可愛いカップルだ。
 失敗にめげず、つねに洒落っ気を無くさず、奇抜な発想が閃くフィツカラルド。そんな夢見る少年のようなフィツカラルドを見守り助ける無垢な少女のようなモリー。
 実はモリーは娼館の主で、少しも無垢なんかじゃないんだけど、貧しい地域では、食い詰めた少女が何とか生きていくことを助ける優しい女将のような慕われ方なのだろう。売春が合法な地域では、こうした立場というのもありかもね。
 で、フィツカラルドは彼女のヒモということになる。でも、怠惰に遊びほうけることなどまったくなくて、まじめに事業を起こすことに励み、真剣にモリーを幸せにしたいと常に考えている。
 二人ともなかなか素敵なキャラだ。

 演じるのはクラウス・キンスキーとクラウディア・カルディナーレ。
 クラウス・キンスキーのラブ・シーンというのは……、う〜む、少し悪夢のようだ。
 一方のクラウディア・カルディナーレは、若い頃のキラキラした美しさはちょっと旬を過ぎてるけど、全身から放たれる可愛らしさは相変わらず。さすがだ。

● お奨め
 主役のお馬鹿なチャレンジに驚くやら、あきれるやら。
 しかも、それをそのままの形で実際に行って撮影するというお馬鹿っぷりにも脱帽。
 でもすごく面白くて、観終われば――後味爽快!
 お奨めです。


画像
小舟で登場――フィツカラルドとモリー

画像
川を遡(さかのぼ)る

画像
ジャングルにオペラを響かせる
クラウス・キンスキーのドヤ顔

画像
小舟で登場――インディオたち

画像
上り

画像
てっぺん

画像
下り

画像
小舟で登場――オペラの一行

画像
愛する人のための特等席
クラウス・キンスキーのドヤ顔

ヘルツォーク(Werner Herzog)の映画の感想
 ⇒ アギーレ/神の怒り
 ⇒ カスパー・ハウザーの謎
 ⇒ フィツカラルド (今回の書き込みです)
 ⇒ ノスフェラトゥ
 ⇒ コブラ・ヴェルデ
 ⇒ アラビアの女王 愛と宿命の日々

 ⇒ このブログのトップへ
 ⇒ 映画の感想のインデックス(作品名順)
 ⇒ 映画の感想のインデックス(監督名順)
 ⇒ 映画の感想のインデックス(テーマ別(?))

 ⇒ 映画(全般)ブログランキングへ
 ⇒ にほんブログ村 映画ブログへ

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

映画の感想文 [776] フィツカラルド ハムイチの棲み家/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる