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zoom RSS 映画の感想文 [919] ジンジャーとフレッド

<<   作成日時 : 2016/02/28 23:26   >>

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【ジンジャーとフレッド】
原題:Ginger et Fred
製作国:イタリア フランス 西ドイツ
製作年:1985年
日本公開:1986年12月
監督:Federico Fellini(フェデリコ・フェリーニ)
出演:Giulietta Masina(ジュリエッタ・マシーナ), Marcello Mastroianni(マルチェロ・マストロヤンニ)

===== あらすじ(途中まで) =====
 ローマのテレビ局が作るクリスマスの特別番組に出演するため、何人もの芸人たちが小さなホテルに集められた。
 その一人アメリア・ボネッティは、かつてピッポ・ポティチェーラという相方と二人で「ジンジャーとフレッド」というコンビを組み、人気ダンサーだったジンジャー・ロジャースとフレッド・アステアのモノマネをしていた。アメリアはピッポとの30年ぶりの再会に心を踊らせるが、ピッポはいつまでたってもやって来ない。ようやく夜中になって顔を合わせるものの、すっかり酔っていて満足に話をすることもできなかった。
 翌朝、アメリアがホテルのピアノを使ってリハーサルをしようと言っても、ピッポはまじめにやろうとしない。アメリアの不安は募るばかりだが、テレビ局に移動して昔の衣裳に着替えると、さすがにピッポはしゃきっとする。
 しかし本番が近づくとピッポは怖気付き、一緒にここから逃げ出そうとアメリアに言いだした。

===== 感想 =====

● 老いらくの恋
 いまでこそ、お年寄りの恋愛を描く映画は珍しくはないけれど、この映画はまさに年老いた二人のささやかな恋を描いたもの。もう二十数年以上も昔の映画だというのに、とってもお洒落で、とっても粋。素敵な恋の二日間が描かれている。

 もちろん若者の恋とは違って、二人の気持ちの表現はものすごく奥床しい。しかも、二人は若い頃に一度は愛し合った仲なので、再会した胸中はかなり複雑だ。

 ピッポはすっかりおちぶれて、その日の金にも困っているらしく、出演料をもらうことしか頭にない。アメリアを気にかけることもなく、平然と金を無心するくらいだ。
 おそらく、これが彼の女性への接し方なのだろう。もてるタイプなので、自分から女性をチヤホヤしたり口説いたりしない。恋愛もその場限りなど、刹那的なことが多いみたいだ。
 一方で、おちぶれてもプライドは残っているはずで、そんな男が女に金を頼むのは、心を許しているということ。つまり、ピッポにとってアメリアは特別な存在なのだ。

 アメリアはそれなりにゆとりのある暮らしを送っているらしい。身形(みなり)もきちんとしているし、金銭に執着するようなところもない。
 再会するピッポに寄せる想いは、まるで少女の片思いのような風情すらある。彼女の恋心が一番高まったのは、おそらく停電で真っ暗になったスタジオで、ピッポから一緒に逃げようと囁かれたときだろう。まるで二人で駆け落ちするかのような心境になってしまったのではないかな。僕なら、ものすごくドキドキしてしまうシチュエーションだ。

● ダンス
 圧巻は二人でダンスを踊るシーン。
 アメリアはちゃんと踊れるけれど、ピッポは危なっかしい。体のバランスは崩れ、足元はよろよろとして、いまにも縺(もつ)れて倒れそうだ。振り付けもときどきアメリアが声で教えている。
 それでも最後まで踊りきってしまう。年をとっても、やるときはやるのだ。
 踊り終わったあと、舞台裏で感動して泣き出すアメリア。一番胸が熱くなる場面だ。

 観ていた他の出演者たちやテレビの客たちも感動する。ただし、こちらは二人の本来の芸であるモノマネに感動したものではない。お年寄りが頑張って踊ったことへの感動だ。それでもピッポはサインをねだられたりするわけで、本人はやりきった達成感を感じていることだろう。

● 主役
 主役二人は、監督の常連。
 アメリア役にジュリエッタ・マシーナ。監督夫人だ。1921年2月22日生まれなので、撮影時は60代半ば。ものすごく魅力的な年配の女性を演じている。
 ピッポ役はマルチェロ・マストロヤンニ。こちらは1924年9月28日生まれで、60代前半ということになる。
 ピッポ――マルチェロ・マストロヤンニのよたよたしたダンスは、どこまで素なのだろうか。すごく気になるところ。

● 芸人たち
 ほかの芸人たちも面白い。どれも二流どころばかりなのだが、一種独特の哀愁を誘う。もちろん、この監督の定番、大道芸の要素であることは言うまでもない。
 まずは、そっくりさんたち。レーガンとウッディ・アレン、マレーネ・ディートリッヒとライザ・ミネリという俳優たち、刑事コジャックにターザンというキャラクター、さらにはカフカにプルーストという作家。笑えます。次いで、アクロバットや小人の一団やインチキくさい降霊術師。
 彼らが演じるスタジオのセットは円形のステージで、その縁が「リング」のように回転する。これは、そのまんまサーカスを連想させるものだ(*1)。
 また、彼らのためにテレビ局が用意したホテルは、周りがゴミだらけでワイングラスなどの食器も汚いという安宿。そもそも、局の態度からして二流扱いなのだ。

 なお、降霊術のシーンがあるのは、もしかしたらこの映画のメッセージの伏線かもしれない。
 スタジオが停電になったとき、ヒッポが言う。
「マニアだけが覚えてくれてる。
 俺たちは幽霊さ。
 闇から現れて闇に消える」
 これは単に芸人たちの浮き沈みを言っているだけでなく、映画のキャストやスタッフのことも言っているのかもしれない。もちろんそこには監督自身も含まれている。
 フェリーニは、そろそろ自分自身の幕引きを考えていたのかもね。(*2)

● 温かい
 とにかく観ていてほのぼのと心が暖かくなってくる映画。
 年配の夫婦が一緒に観るのに最適。


(*1) リングリング・サーカスね。ただしリング(輪)が二つではなく「リングリング」で一つの固有名詞。Ringling Bros. and Barnum & Bailey Circusだよ、念のため。
(*2) フェリーニは、1920年1月20日生まれの60代後半。この映画の7年後の1993年10月31日に亡くなる。
 なお、ジュリエッタ・マシーナと降霊術の組み合わせは『魂のジュリエッタ』(日本公開:1966年)以来かな?

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30年ぶりの再会

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30年ぶりの衣装

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30年ぶりのダンス

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