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zoom RSS 映画の感想文 [1073] われらが背きし者

<<   作成日時 : 2017/05/11 17:35   >>

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【われらが背きし者】
原題:Our Kind of Traitor
製作国:英国
製作年:2016年
日本公開:2016年10月
監督:Susanna White(スザンナ・ホワイト)
出演:Ewan McGregor(ユアン・マクレガー), Naomie Harris(ナオミ・ハリス), Stellan Skarsgard(ステラン・スカルスガルド), Damian Lewis(ダミアン・ルイス)

===== あらすじ(途中まで) =====
 ロンドンで大学講師をしているペリーと妻のゲイルは、旅行先のモロッコでディマという金持ちのロシア人と知り合った。ディマの正体はロシアン・マフィアの資金係だが、組織のトップが代わったために自分と家族の危険を感じるようになり、MI6に情報を提供してロンドンへ亡命することを考えていた。
 ペリーはディマに頼まれてUSBメモリをMI6のヘクターに届けた。それですべてが終わると思っていたが、スイスでヘクターがディマに接触するためには、ペリー夫婦も一緒にいることが必要だと言われた。ディマの家族のことを思うと断ることもできず、ぺリーとゲイルはヘクターに協力すると決め、一緒にベルン行きのTGVに乗り込んだ。
 実はこの事件には英国の有力議員が絡んでいて、ヘクターは捜査の許可が得られず、独断で実行しているものだった。

===== 感想 =====

● 義
 平凡な大学講師と弁護士の夫婦が、諜報戦に巻き込まれていく。MI6への協力を断ることはできるが、心情的に断れない。結局は、マラケシュ、ロンドン、ベルンと移動しながら、かつてのスパイ映画のエージェントのようにスリリングな行動をすることになる。

 ここで一番のポイントは、なぜ、ペリーとゲイルはこんな危険なことをするのかという動機だろう。
 それはもう「義」としかいいようがない。

 まず、ペリーはとても正義感が強いと描かれている。特に、誰かが弱い者をいじめるのを見過ごすことはできないし、困っている人を見ると放っておけない性格だ。大学では詩の解釈を講義していて、いわゆる体育会系とは真逆の性格だが、さりとて論理やイデオロギーなどで動くタイプではないし、規律に厳格といった堅い性格でもない。情緒的に正しいと思う行動をするタイプなのだろう。

 妻のゲイルは法廷弁護士をしている。実はペリーが教え子と浮気をしたために、ペリーへの思いが冷え切っていたのだが、ディマの家族のためにすべてを投げ打って行動する夫の様子を見て、次第に愛を取り戻すようになる。
 ゲイルも心優しい女性であり、ディマの家族のことを放っておけないのだ。

 こうした義や優しさといった心情だけからこれほどの行動をするというのは、ちょっと驚きだ。自分の身になって考えた場合、この夫婦の真似はできなくても、もう少し共感してもよさそうなものだけど、残念ながら映画の終わりまで、僕の心から違和感が完全になくなることはなかった。
 これって、僕の心がクズになりかけてるということだな。反省。

● 平凡
 ペリーとゲイルは、ユアン・マクレガーとナオミ・ハリスが演じている。スパイ合戦に巻き込まれる平凡なロンドン市民という風情をうまく醸していた。

 ロシアン・マフィアのディマの心には、平然と人の喉を掻き切るような冷酷さと、父親として家族を思う優しさとが共存する。さらに、ラスト近くで自分の運命を悟り、ペリーが死なないように気を配るあたりは(ペリーが生き残ることによって後で大切な情報がMI6に届き、それによって家族が守られることになると計算していたとはいえ)、強烈な自己犠牲や「義」を感じるところでもあり、観ていてすっかり感情移入してしまうんだよね。
 ロンドンに辿り着いたディマの家族の後姿から、家族を大切にする父親への思いが強烈に伝わってくる。その心情は平凡な父親と同じなのだ。
 演じるのはステラン・スカルスガルド。ただ凄みがあるだけのマフィアなんかじゃない役作りが、すごくいい。

 MI6のヘクターも、いかにも英国のインテリジェンスという風情と、不正をただすために弁舌をふるう熱血とを併せ持っている。飄々とした雰囲気のダミアン・ルイスがちょっと印象に残る。

● 緊迫
 映像は全体的に英国風味の重苦しいもの。青みがかった色合いのシーンが多かった。

 一番の見どころは、ペリーとディマが会う幾つかのシーンの撮り方だろう。
 カメラを細かく切り替えながら次々と周りにいる人物の表情を映す。ディマを監視するマフィアたちもディマの家族も、その場にいる全員が、それぞれの思惑を抱きながら、ベリーやディマの言動に神経を集中しているのだ。
 この一人一人の表情の積み重ねが、一種異様な緊迫感を紡ぐことになる。と言っても僕は年齢のせいかカットの切り替えのテンポが速すぎるように感じてしまい、もう少しゆっくり見せてくれればもっと気分が盛り上がったのにと、少し残念な気分。
 まあ、年だからしゃあないか。若い人にはちょうどいいんじゃないかな。

● お薦め
 最後のオチは、映画の序盤のクレジットカード番号のネタが伏線となっていて、お約束のようなものだけど、素直にほっとした気分。ロンドンのどんよりした空から雲間の光が射すような感じ。
 かなり良質なサスペンスという後味だよ。


画像
ようやく辿り着いたロンドンの遠景

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