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zoom RSS 映画の感想文 [1074] 白い酋長

<<   作成日時 : 2017/05/13 10:47   >>

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【白い酋長】
原題:Lo Sceicco Bianco (英題:The White Shiek)
制作国:イタリア
制作年:1952年
日本未公開
監督:Federico Fellini(フェデリコ・フェリーニ)
出演:Leopoldo Trieste(レオポルド・トリエス), (ブルネッラ・ボーボ), Alberto Soldi(アルベルト・ソルディ)

===== あらすじ(途中まで) =====
 フォト・ロマンス(*1)が人気の時代。イヴァンとワンダの夫婦がローマへ新婚旅行にやってきた。イヴァンは、親戚と一緒に市内見学をしたり、ローマ法王に謁見する予定を楽しそうに話すが、ワンダはどこかうわの空。実は密かにフォト・ロマンスの人気スターのリヴォリに会いたいと思っていたのだ。
 ワンダは、イヴァンが昼寝をしている隙にホテルを抜け出し、リヴォリのスタジオを訪ねることにした。ちょうど撮影に出発するところで、これまでに何度もファンレターを出したことで名前を知られていたワンダも同行させてもらえることになった。
 着いた場所はローマ郊外の海岸。そこで砂漠のヒーロー「白い酋長」の撮影が行われていた。休憩時間にリヴォリはワンダをヨットに誘い、二人きりの船上で口説こうとするが、ワンダはキスすらも拒み続けた。浜辺に戻るとリヴォリの妻が待ち構えていて、激しい夫婦喧嘩が始まるが、二人はすぐに仲直りしてバイクで一緒に帰っていった。憧れのスターに裏切られた思いのワンダは、草むらで泣くうちに、帰りの車に乗りそこなってしまう。
 一方、ワンダがいないことに気付いたイヴァンは、そのことを親戚に隠しながら行方を探すが、一向に手掛かりはつかめないままだ。夜中の広場で一人泣いていると、たまたま通りかかった二人の娼婦が声をかけてきた。片方はカビリアという名だ。


(*1) フォト・ロマンス
 漫画のように写真に吹き出しの台詞をつけ、何枚も並べてストーリーを持たせたもの。

画像
白い酋長と女奴隷ファティマ

===== 感想 =====

● フォト・ロマンス
 フォト・ロマンスというのは、絵の代わりに写真で作った漫画のようなもの。
 撮影の準備は映画と大差がなく、ロケ地の整備、美術の制作、カメラのセッティング、俳優の衣装とメイクなどが行われる。ただし、詳細なシナリオがあるわけではなく、その日の撮影内容について数頁程度の大まかなあらすじを監督がその場で説明するだけ。あとは役者がコマ落としのように少しずつ動きながら、監督の「シャッター」という掛け声でピタリと静止し、すかさずカメラマンがシャッターを切るというもの。これをストーリーに沿ってずっと続けていく。
 現代でも作ってみたら、案外、面白いかも。

● 白い酋長=青い鳥
 ワンダは毎週発刊される雑誌に載っている「白い酋長」を楽しみにし、その主役を演じるリヴォリの大ファンだ。
 なお、白い酋長の英訳は「The White Shiek」。「shiek」は、原語はアラビア語で「シャイフ」や「シェイク」に近い発音とのこと。「アラブの族長」という意味らしい
 しかし話の内容として、アラブとか酋長とかはあまり意味があることではなさそう。あくまでもオリエンタルなムードの映像にするためのネタだろう。
 むしろ、話の上では「白い酋長」は一人の娘のあこがれの対象であり、幸せの象徴ということになる。ワンダは恋するように白い酋長を追い求めるが、彼の醜い実態を見て現実に目覚め、自分の真の「白い酋長」は夫イヴァンだと悟る。そして互いを思い、貞淑であり続けることが幸せなのだと感じる。
 つまり「白い酋長」は「青い鳥」になぞらえるものということだな。

● 撮影風景
 この映画で面白いのは、撮影風景だろう。
 ローマ郊外の砂浜でフォト・ロマンスの撮影が行われるという設定で、その様子がずっと描かれる。このときの監督の苛立ちが、なかなか興味深い。
 美術が船に絵を描いているけど仕上がりが遅いのに苛立ち、打ち合わせをすれば自分の話に集中しない役者たちに苛立つし、屋外なので風に揺れる衣装にも苛立つ。いよいよ本番というときには、背景に海水浴客のパラソルが映り込むわ、撮影見学のデブおやじがぼさっと立ってて邪魔だわと、苛立つことばかり。
 こうした苛立ちはフェリーニ自身が感じたものなのかもしれない。だからこそ、彼は邪魔の入らないスタジオ撮影にこだわるようになったのかも――なんて想像してみる。

 なお、ワンダとリヴォリがヨットに乗るシーンは、ちょっと難あり。背後の波の形から、波打ち際で撮っていることが見え見え。僕は、渚の映像を背景にしてスタジオで撮ったのかと思ったけど、実は当時のカメラは大きすぎて、海上での撮影が容易ではないための苦肉の策ということらしい。
 時代だな。

● 役者
 主役のイヴァンを演じるレオポルド・トリエステは、往年のコメディ役者のような雰囲気。僕が聞いたいい加減な話によると、彼の顔だちはイタリアでは田舎者の面構えということらしい。そうなのかいな?
 新婦ワンダ役はブルネッラ・ボーボ。現代の女性より、劇中劇のアラブの女奴隷(名はファティマという。)のほうがいい感じ。
 リヴォリ役のアルベルト・ソルディ。顔は蛭子能収に似て、坂上二郎の「トビマス、トビマス」みたいなフリでダンスを踊る。あまりかっこよくない。
 監督役の役者は津川雅彦に似て、ちょっと渋い。

 で、フェリーニのファンとして注目なのは、娼婦カビリアだろう。演じるのは後に監督夫人となるジュリエッタ・マシーナ。映画全体のトーンからはちょっと浮き気味だけど存在感抜群。画面への登場も例によって妙に気になる踊りから。そして彼女の最後のシーンは、口から火を噴く大道芸にはしゃぐところ。
 娼婦、踊り、大道芸(あるいはサーカスやピエロ)――まさにフェリーニの定番要素の連打だ。
 またカビリアは、後にスピンオフして『カビリアの夜』という映画が作られることになるのは説明不要だな。

 なお、カビリアが大道芸にはしゃぐうち、イヴァンはもう一人の娼婦(名はアッスンタという。)と一緒にその場を立ち去る。その後の様子は描かれていないけど、以下のオチバレのとおり、結局「何もなかった」ようだ。

● オチバレ
 僕はこの映画のラストが結構好き。なのでオチバレだけど紹介するね。

 再会したイヴァンとワンダは、親戚と一緒に法王に謁見するための行列に並ぶ。腕を組んで歩きながら、ワンダがそっと打ち明けた。
「イヴァン、私は過ちを犯さなかった。
 不運な目にあったけど清らかなままよ」
 それを聞いて、ほっとした表情を見せながら、イヴァンも打ち明けた。
「僕もだよ」

 二人とも奇妙でさんざんな一日を体験し、誘惑はあってもそれを拒んだのだ。二人はこれからずっと深く愛し合うことになるのだろう。
 場所はサンピエトロ広場。カトリックの聖地だ。本来はストイックで厳格な場所なのに、何ともオシャレでロマンチックな結末というミスマッチ。これが最後にほのぼのとした笑いを誘う。
 粋なラブ・コメディだということ。

● 時代物
 この映画、フェリーニ・ファンなら観るだろうけど、それ以外の人には微妙。
 白黒だし、画面は狭いし、時代背景は古臭いし、役者は知らんし、話もちょい地味だし……。時代物にしか思えないだろうな。


画像
監督「シャッター!」

画像
カビリア(ジュリエッタ・マシーナ)登場

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