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zoom RSS 映画の感想文 [1102] グリース

<<   作成日時 : 2017/07/28 12:23   >>

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【グリース】
原題:Grease
制作国:米国
制作年:1978年
日本公開:1978年12月
監督:Randal Kleiser(ランダル・クレイザー)
出演:John Travolta(ジョン・トラボルタ), Olivia Newton-John(オリヴィア・ニュートン・ジョン)

===== あらすじ(途中まで) =====
 夏休みに海で知り合って別れたはずのダニーとサンディーが、新学期に高校で再会した。サンディーが偶然ダニーのいる高校へ転校してきたからだ。
 しかしダニーはTバーズというグループのリーダーで、どこか冷たいそぶり。サンディーは色っぽいリッゾを中心としたピンクレディースという女子グループと仲良くなり、Tバーズといつも会うようになるが、ダニーとの関係は近づいたり離れたりということを繰り返すばかりだった。
 Tバーズの一人、ケニッキーが中古の車を購入した。あまりにボロイのでダニーたちは高校の自動車部で改造を始めるが、よその高校のグループ、スコーピオンズから挑発を受け、街中でレースをやることになった。

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===== 感想 =====

● グリーサーズ
 タイトルの「グリース」とは機械油のこと。日本では「グリス」と発音することが多いんじゃないか。これを整髪料代わりに髪にべったり塗ってリーゼントを固めるというものだ(実際にはポマードを使うらしいけれど)。実は、この映画にも登場する当時の人気バンド、シャナナ(Sha Na Na) などのスタイルのことで、彼らのバンド紹介の決まり文句の冒頭は「Ladies and greasers」とのこと。
 この時代の流行語なのだろう。

 グリーサーズ――ダニーたちはギットギトのリーゼントに、袖をまくったTシャツと黒い革ジャン、いわゆる「ちょいワル」な雰囲気。
 一方、リッゾたちは濃い化粧にピンクのジャンパー、いつも男に色目を使っていて、ちょっと淫らな雰囲気。
 ここにウブなお嬢様風のサンディーが加わるけど、何ら臆することもなくダニーやリッゾのグループと付き合うし、彼らに受け入れられる。タイプが違うからといってイジメるようなことは起こらない時代なのだ。

 昔々のワルっぽいけどウブな男子と女子の子供っぽい鞘当てのやり取りを楽しむというものだな。
 ホノボノしてます。

● 年齢不詳
 この映画は俗に「学園ミュージカル」と呼ばれ、全編に歌と踊りがちりばめられている。
 ダンスパーティーなどの場面のほかは、歌や踊りが話の流れの中で突然始まるというもの。ミュージカルを観る機会が少ない人の場合、観ていてかなり違和感を感じるかもしれない。
 演じる役者たちは、ほとんどが20代から30代という風情。つまりオッサンやオバサンが若作りして高校生を演じているという感じだ。「老けてる〜」とあきれるのが、まあ、素直な第一印象だろうな。

 若作りが唐突に唄い出す――観ていて笑っちゃう人もいるかもね。

● 米国風
 こうした気になるポイントが多々あるにもかかわらず、この映画は米国を中心に大ヒットした。笑っちゃうだけでは済まないのだ。日本人と米国人の感想の違いって何だろうと気になるところなのだ。

 まずは場所。
 設定上では舞台となるライデル高校がどこにあるかは定かでないけど、高校のフットボールチームの愛称がライデル・レンジャーズ(Rydell Rangers)らしいので、森林・山岳地帯に近いということかもしれない。ロケ地はロサンゼルスのヴェネチア高校とのことだが、高校生たちが海へ遊びに行くシーンはないので、西海岸ではなく、西部でも内陸寄りの田舎町という設定なのだろう。
 こうした設定が大きなキーポイントだと思う。
 題材はまさに典型的なアメリカ中西部の田舎高校。おそらく公開当時(1970年代後半)の多くのアメリカ人がちょっとノスタルジックになるような、少し昔の古き良きハイスクール生活を思い出させるものなんじゃないかな。
 この映画の設定は、「あめりか人」の心の琴線にしっかりと触れるものなのだ。

● イマジネーション
 当然のことだけど、設定だけで映画がヒットするわけもない。中身も重要だ。
 つまり、歌も踊りも演出もしっかりした映画であり、日本人よりはるかにミュージカルを観なれたアメリカ人にとって良質な映像と感じる作品だからこそ、大ヒットしたと考えるべきだ。(*1)

 ちなみに、ミュージカルでは年配の役者が若者を演じるなどいくらでもあること。あるいはオペラに至っては、びっくりするほど豊満(?)な女性が薄命の美女を演るなんて設定はいくらでもあること。
 今回の映画程度の年齢ギャップなど、こうした作品を見慣れていれば、違和感を感じるのは最初のうちだけ。後は演じられている中身そのもの、つまり歌や踊りを楽しみ、若い男女の純な恋心なんてものをイマジネーションの力で感じてしまう――そういう感性なんだよね。

 またダンスの振付もすごく古臭く感じるだろうけれど、それは映画の制作年代から当然のことだ。ただし、僕ら日本人は、ダンスについては少し田舎センスだということをわきまるべきだ。
 つまり、映画の中のダンスコンテストで体育コーチが言うとおり、ダンスといえばまずは「男女のペアで踊る」というのが、欧米でのメジャーなセンスなのだ。そしてペアのダンスの場合、ボックス、ジルバ、マンボなどの基礎がないとドンクサになっちゃう。一方、最近の日本で目にするダンスは一人又は集団で踊るという振り付けが多く、ペアの踊りはさほどのものが無いんじゃないか。でも、それがダンスのすべてではないし、日本以外ではメジャーなものでもない。

 つまり、若作りが唐突に唄い出す古臭い映画で笑っちゃう⇒ゆえに糞映画だと結論付けちゃう人は、まあ、日本的な感覚ということ。
 もう少し感性の世界観を広くすれば、この映画を素直に受け入れられると思うよ。

● ヒーローとヒロイン
 主役のダニーとサンディはジョン・トラボルタとオリビア・ニュートン=ジョン。
 ジョン・トラボルタは既に『サタデー・ナイト・フィーバー』でダンスのうまい男優として有名になっていたし、オリビア・ニュートン=ジョンは美形のカントリーシンガーとしてやはり人気を確立していた。

 ジョン・トラボルタについて言えば、彼のダンスが一つのピークを迎えた時期といってもいいんじゃないかな。あまりドタバタと動くような感じではなく、どこかゆっくりした動きなんだけど、ぴたっとリズムに合ってるし、ポーズの決めも天才的。不思議な魅力にあふれた踊りになってる。そして『サタデー・ナイト・フィーバー』よりうまく、逆に後の『ステイン・アライブ』のような臭さもない。
 この後はしばらく低調になり、『パルプ・フィクション』のユマ・サーマンとのツイストで復活するといったところかな。
 なお、普通の場面で歩くとき、珍妙なくらいにウネウネと上体を上下に揺すっている。これはラスト近くの大ヒット曲『愛のデュエット(You're The One That I Want)』のシーンへの伏線という感じだな。トラボルタは映画全体にわたって『愛のデュエット』を踊り続けていたとオチを付けるところだ。

 オリビア・ニュートン=ジョンは歌。
 元々は澄んだ可愛い声質の歌手というイメージだったけど、後に『フィジカル』などで危ない路線にシフトしていく。今回、改めてこの映画を観て、実はこの時期の声が既に変わり始めていることに気が付いた。淫靡というのは言い過ぎだけど、少し色気が強い声質なのだ。特に上述の『愛のデュエット』を映像と一緒にじっくり何度も聴いていると、そう感じることができると思うよ。

 脇で面白いのはリッゾ役のストッカード・チャニング。ときどきエリザベス・テーラーに似ているように見えることがあるんだよね。

● 楽曲
 音楽に注目だけど、『サタデー・ナイト・フィーバー』ではメインがビージーズだったに対し、この映画ではシャ・ナ・ナ。映画の中でもダンス・コンテストのシーンで『ジョニー・カジノ&ザ・ギャンブラーズ』という役で登場し、何曲か披露している。プレスリーの『ハウンド・ドッグ(Hound Dog)』は広く知られていると思うけど、『ボーン・トゥ・ハンド・ジャイヴ(Born To Hand-Jive)』なんて聴くと、「これこれ! シャあ、ナあ、ナあ(1音ずつ音程を上げながら)、だべさ!」と感慨にふけるところ(ジジイの感想でスマン)。

 この映画の楽曲の僕のベスト・スリーは、まずは車の改造シーンの『グリースト・ライトニン(Greased Lightnin')』。ジョン・トラボルタがカッコ良すぎる!

 次いで、上述の『愛のデュエット』。ジョン・トラボルタとオリビア・ニュートン=ジョンの掛け合いが最高。例えば、
  ♪I got chills!
   They're multiplying!
  (ゾクゾクしてきた。
   来る、来る、来る〜!――みたいな意味かな)
 てなことをジョン・トラボルタが電気に撃たれたようにやたら甲高い声で歌うと、
  ♪If you feel a weird affection
   You're too shy to convey
   Better take my direction
   Feel your way
  (最高の愛を感じてるなら、
   恥ずかしがらずに言って!
   私がどっちを向くのも
   あなたの思うままよ!
   ――かなりの意訳だけどさ)
 てな具合にオリビア・ニュートン=ジョンがちょっとさめた声で応え、さらにはきわどい言葉で誘う。
  ♪I need a man
   Who can keep me satisfied
  (男が必要なの
   私をずっと満足させてくれる男が!――だな)
 ここの声質がかなり色っぽくて艶のある響き。
 もうたまりません。ゾクゾクです!

 そしてもう一つのお気に入りが、映画の中盤。美容学校に転校して落第したフレンチーが妄想する場面だ。フランキー・アヴァロン(Frankie Avalon)が『ビューティ・スクール・ドロップアウト(Beauty School Dropout; 「美容学校の落第生」ぐらいの意味)』を唄う。甘い歌声が心地良いし、コーラスに銀髪パーマのリッゾがいたりして、映像も楽しい。
 僕にとっては、どっぷり壺にはまる大好きなシーンだ。

● ドンクサには無理
 観る目が無ければ、キャストはジジババで、キャラはキモイ若作りだし、踊りは古臭いし、腰振ってるだけだし、映像も何かチャッチイ。
 でも、それってしょせん世界観の狭い日本的感性なんだよね。ドンクサには無理な映画ということ。
 素直にまともな歌と踊りを見たいならお薦め。


(*1) どこらあたりが良質なのかという指摘は、本文では省略。
 いまどきの日本では、
 ・ 音域が狭く、音程が不安定で、声質に魅力の無い歌手もどき
 ・ 声量の無いラッパーもどき
 ・ 軸の不安定なヒップホップダンサーもどき
 を当たり前と思っている人が多くて……。
 そんなの本物じゃないよと言うのも、いなかもん相手にするみたいで、もうメンドクセ。

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エリザベス・テーラーにそっくりなストッカード・チャニング

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「それしか言えないの、坊や?」

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