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zoom RSS 映画の感想文 [1092] 忍びの国

<<   作成日時 : 2017/07/06 00:30   >>

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【忍びの国】
製作年:2017年
公開:2017年7月
監督:中村義洋
出演:大野智、石原さとみ、鈴木亮平、伊勢谷友介

===== あらすじ(途中まで) =====
 信長が天下統一を目指していたころ、伊賀は忍者の国となっていた。有力な12人の上忍による合議で国が運営され、それぞれが大勢の下忍を使って各地の大名や豪族から仕事をもらい報酬を稼ぐ。しかし、仕事や修行中に死ぬことも多く、集落間での小競り合いも少なくなかった。
 ずば抜けた才能を持つ下忍の無門には結婚したい女がいた。お国という名で、安芸の国から連れてきた娘だが、気が強く、一万貫なければ結婚しないと言って、無門を家にいれようともしない。無門は金を稼ぐため、上忍の百地三太夫に頼まれて、敵対する上忍、下山甲斐の次男次郎兵衛を殺した。
 隣国の伊勢では、織田信長の圧力で次男信雄が領主北畠具教の婿養子となり、その後、元重臣の日置大膳や長野左京亮を使って具教を殺し、国を乗っ取ってしまった。信雄はさらに伊賀制圧を考え、内通者の下山平兵衛の指示に従って計画の準備を始めた。平兵衛は無門に殺された次郎兵衛の兄で、子が殺されても平然としている父の姿を見て、伊賀忍者の仕組みそのものに恨みを抱くようになっていた。
 百地らの上忍たちは、信雄に恭順するふりをし、丸山城の築城などに協力するが、城が完成して褒美をもらうと、すぐに城を燃やしてしまった。怒った信雄は1万の軍勢で伊賀へ攻め込んだ。上忍たちは迎え撃つ準備をするが、下忍の半分近くは伊賀から逃げ出していた。
 無門もお国を連れて京へ向かっていた。しかし、お国は伊賀にいる女子供は皆殺しにされると聞き、残ってみんなを助けるよう無門に頼み込んだ。無門は戦うことを決意した。先日、信雄の居城で得た茶入の茄子を取り出すと、これを報酬にして、逃走しようとする下忍たちを引きとめることに成功する。

===== 感想 =====

● 天正伊賀攻め
 有名な織田の軍団による伊賀攻略のお話。天正伊賀攻めと呼ばれ、大きく2回に分かれていて、この映画の多くは第1次のもの。ラスト近くに第2次の様子が少しだけ登場する(*1)。

 伊勢から伊賀に入る街道は3本あり、上忍たちはそれぞれの国境近くで待ち伏せをするが、下山平兵衛の助言でことごとく見破られ、自分たちの背後を取られたりして苦戦する。このとき、無門が大勢の下忍を引き連れて戻って来たために救われるが、それは無門が持つ茄子の報酬につられたもの。もしも茄子がなかったら、1次めの伊賀攻めで上忍たちは壊滅していたことになる。
 で、この茄子を無門がどうやって手に入れたかというと、信雄を脅すために伊勢の城(おそらく田丸城)に忍び込み、偶然、幽閉されていた北畠具教の娘の凛に出会い、信雄を殺すことと引き換えに渡されたもの。もしも、この偶然がなければ、1次めの伊賀攻めで上忍たちは壊滅していたことになる。
 かなり強引な展開なのだ。

 実は、伊賀攻めそのものが上忍たちの術――つまり策略だったということが後で明かされる。
 はあ? 冗談でしょ!
 という気分だ。
 だって、彼らの策略だけでは、1次めの伊賀攻めで上忍たちは壊滅していたことになる。
 もう、むちゃくちゃな話なのだ。

 まあ、忍者映画なので、多少の無茶は有りということで、ここは一つ、寛容に……。

● 上忍
 この映画の魅力の一つは、こうした悪巧み(わるだくみ)をする上忍たち。
 信雄たちに騙されて城を作るふりをして、実はちゃっかり金を稼ぐだけ稼ぎ、しかも伊賀を攻めるように挑発する。実際には彼らの策略は失敗するところだったけど、悪運(?)の強さもあって、結果は大成功となる。
 三つの街道の守備の指揮をするのは、有力な上忍である百地三太夫と下山甲斐と音羽の半六。それぞれを立川談春、でんでん、きたろうが演じてる。
 温厚そうに見えて冷血な策略家の百地三太夫、息子に愛の欠片も持たないくせに妙に俗っぽくて生臭い下山甲斐、結果オーライのお調子者のくせに空威張りする音羽の半六といったキャラになっていて、これは演じる役者の個性が色濃く出たものだろう。

 素直にこの3人を主役にして、「悪巧み三忍組」みたいな話をコメディ・タッチで作ったら、きっと傑作になると思うよ。

 なお、上忍ではないけど、その後継者だった下山平兵衛。
 伊賀の上忍も下忍も人間じゃないと吐き捨て、滅びることを願う。大量殺りくを招くことになるけど、当時、戦国時代としては致し方の無いところ。そう思うと、この映画では一番まともな登場人物なのかもしれない。
 演じるのは鈴木亮平。
 忍者どうしが戦う場面では、彼が絵を締めていたと言っても過言ではないと思うよ。

● 伊勢衆
 次の魅力は、伊勢の武将たち。
 ファザコンだけど案外いい奴の織田信雄、戦国武士の鑑(かがみ)のような日置大膳、一方、勤勉に頑張る中間管理職を思わせる長野左京亮。それぞれ知念侑李、伊勢谷友介、マキタスポーツが演じていて、それぞれ光ってた。ここも「伊勢三人衆」とかのスピンオフを作ってほしいところ。
 特筆すべきは、伊勢谷の格好良さだな。彼を見るためだけに映画代を払ってもいいなと思えるほど。とにかく、彼が映画全体の印象を締めていたと言っても過言ではないと思うよ。

● 下人ども
 コメントしづらいのが下忍たち。
 上忍に稼ぎを搾取され、全身全霊で酷使され、死ねばゴミのように捨てられ、さらに不条理な織田軍の侵略の犠牲となる。通常のお話であれば、悲惨な被害者にして体制に逆らう情念の持ち主ということになりそうだが、このお話では、そんな反逆精神など微塵もない。悲惨という意識すら持たない。
 彼らの行動原理は、金だけ。
 ただただ働いた報酬をもらうこと、その額が大きいか小さいかだけが、すべての関心事なのだ。金のために女子供を殺すことなど平気だし、仲間がやられても何ら感情が動くことはない。
 全くのゲドウでゲスな奴らなのだ。下忍ではなく、人間のカスという意味で、下人と呼びたくなる。
 実際、映画の登場人物の中で、無門以外に魅力を感じるような下忍は登場しなかった。持ち技などのバリエーションはあるものの、どいつもこいつも銭の亡者というだけの、没個性な集団なのだ。

 下忍がこんな調子なので、彼らに何ら感情移入できない。なので伊賀が攻められても、心の中で伊勢勢を応援する観客も多かろう。
 これでは、下忍の主人公、無門も立つ瀬がない。
 といっても、彼も金で動くだけのゲスい奴だったのだが、愛するお国のおかげで多少は人間性を取り戻すということらしい。

 なお、キャラ設定だけでなく、映像的にも下忍はむごい。
 彼らが戦う様子は、かなりコント仕立てなのだ。もう少し真面目な、といっても忍者らしい真面目なバトルのアイデアを練る場面だと思うけど、まるでくだらないコメディのような戦いがあちこちで繰り広げられる。
 この監督は『チーム・バチスタ』のころから中途半端にコントを入れ込むという悪い癖があったけど、その病が再発し、完全に裏目に出てしまったということかな。あるいは忍者のバトル映像のアイデアがプアーで、それをごまかしたのかな?

● ダサ
 金の亡者で付和雷同するようにつるむ下忍たち――これって現代の若者のパロディだよなと映画の途中で思っていたら、本当にそういうカットが登場してビックリ。
 これはやっては反則でしょう。あるいは、ここまで明け透けな主張は、映画としてダサいというべきかな。
 なので、この映画の総合評価は、ダサ。

 「悪巧み三忍組」と「伊勢三人衆」はすごくいいのに……。


(*1) 天正伊賀攻め
 第1次は天正6年(1578年)、信雄の独断によるもので、伊勢側だけから攻めて大失敗。
 第2次は天正9年(1581年)、再び信雄を総大将とするものの、主に蒲生氏郷や堀秀政ら若手のエースが奮闘し、さらに丹羽長秀、滝川一益、津田信澄らの重臣や筒井順慶、浅野長政らのベテランも参加した豪華メンバー。伊勢と大和の両方から攻撃し、伊賀を壊滅させた。
 何万人もの犠牲者が出たといわれるが、伊賀の忍者や武士が死に絶えたわけではなく、翌天正10年6月に、家康の伊賀越えで伊賀の土豪が家康を守り、その子孫が江戸城大手門警護の伊賀百人組となるのは、皇居にも説明板があるほど有名なお話。

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