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zoom RSS 映画の感想文 [1095] ライフ

<<   作成日時 : 2017/07/11 00:33   >>

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【ライフ】
原題:Life
製作国:米国、英国
製作年:2017年
日本公開:2017年7月
監督:Daniel Espinosa(ダニエル・エスピノーサ)
出演:Jake Gyllenhaal(ジェイク・ギレンホール), Rebecca Ferguson(レベッカ・ファーガソン), 真田広之, Ryan Reynolds(ライアン・レイノルズ)

===== あらすじ(途中まで) =====
 ISS(国際宇宙ステーション)のクルーが、火星探査機が持ち帰った土壌サンプルの中に一つの細胞を発見した。地球外の生命(ライフ)の発見だ。
 ISSのクルーは、ロシア人でミッション・リーダーのカテリーナ、米国人で医者のデヴィッドと航空エンジニアのロイ、英国人で検疫官のミランダと宇宙生物学者のヒュー、そして日本人でエンジニアのショウの六人だ。
 実験室で細胞の培養を試みることになり、原始的な地球環境にすると細胞は動き始め、ついには分裂と増殖が始まった。地球でも大騒ぎとなり、全米中に公募して、その生命は「カルビン」と名付けられた。
 カルビンは成長を続け、半透明なヒトデのような形状になり、しきりに動き回るようになった。知能も高いようだ。クルーはカルビンの隔離が破れないように細心の注意を払うが、突然、カルビンが襲ってきた。ヒューが腕をつぶされ、実験用モルモットが飲み込まれ、さらにロイの体内に入り込んで中から食い殺すと、スプリンクラーの穴から実験室の外へ逃げ出してしまった。

===== 感想 =====

● 既視感
 どこかで見たような設定と展開。宇宙船内で未知の生命体に人間が次々と襲われるということでは『エイリアン』(1979年)にそっくりだし、ISSがぶっ壊れたり、あるいは無重力の映像表現などは『ゼロ・グラビティ』(2013年)にそっくり。それ以外にも多々あって、設定やいくつかのシーンについて、どの作品に似てると感じるかは、観客の年齢層や好きなジャンルの差によって、はっきり異なったものになるだろうな。

 僕の場合、閉鎖空間における未知生物の襲撃というネタで、宇宙ではなく深海だけど、『リバイアサン』(1989年)が外せない。俗にB級と括られる映画の傑作だもんね。
 デヴィッドたちが未知生物と闘うようになってからは、僕はスティーブ・マックイーンの初主演作『The Blob』(1958年; 邦題は『マックイーンの絶対の危機』とか『SF人喰いアメーバの恐怖』とか『スティーブ・マックィーンの人喰いアメーバの恐怖』)を思い出していた。
 これについてはまた後で。

● ホラー/アクション
 何に似てるかはともかく、いろいろな作品に似ている映画だ。
 こういうのって、例えば「閉鎖空間未知生物襲撃もの」などといったパターンの一つと思い、パクリとかなんだとか、あまり悪意には捉えないものだ。なのに、この映画は既視感が強いだけでなく、何となく面白くないといった印象を持たれがちだ。おそらく、話のベースが中途半端だからではないかな。
 つまり、エイリアン(その1)と同じように徹底的に心理サスペンスもののホラーとして描き切るか、あるいはエイリアン2のようにドタバタと地球外生物と闘うアクションものとするか、どちらかにはっきり寄せるべきだったと思う。
 で、ISS船内の映像のリアルさからいって、シリアスな心理ものが合っていたような気がする。もちろん、リアル映像を前提とした痛快アクションもありだけどさ。

● ライフの特性
 さて、今回の最重要キャラ、ライフのカルビン。それはどんなキャラ設定になっているか。
 ミランダらの観察によれば、細胞一つ一つが意志を持ち、集合体となって脳のようなものを持つ生命体になるらしい。形はヒトデに似て、くねくねと柔軟性があり、かなり活発に動き回る。
 犬や猿よりは知能が高く、ゴム手袋を破ってエンクロジャーから逃げ出す方法など、小さな小さな小人さんたちがせっせと働いてるように思えるくらい。可愛い。
 ところが、モルモットや人間を食って大タコくらいの大きさになると、邪悪に知恵が回る怪物といった雰囲気。人間を襲うときは触手のようなものをからませてくるし、移動のスピードはかなり速い。

 実はカルビンの細胞そのものは低温あるいは低酸素の状態だと冬眠状態になる。つまり、ドライアイスの煙の炭酸ガスが苦手ということになるわけで、僕は『The Blob』のスティーブ・マックイーンを思い出していたという次第。
 ところが、カルビンは宇宙空間でも平気で動き回る。低温・低酸素でもすぐに動きが止まるのではなく、ある程度の時間が必要という設定なのだろう。厄介だ。というか、ストーリーを回すための御都合?

● クルーの策
 クルーは、カルビンを「駆除」あるいは「隔離」しなければならない。
 「駆除」は捕獲もしくは殺処分ということで、その意味は明確だ。一方「隔離」には3段階の意味があった。それが何かがこの映画の山場ということらしいけど、まあ、バレバレヤンみたいなネタですな。
 さて、こうしたミッションのためにクルーはあれこれと知恵を絞る。ところが意表をつくような欠陥や事故により、次々と失敗することになる。

 未知な生命であるカルビンが動き始めても、ヒューはゴム手袋越しに触る。もってのほか! ところがエンクロジャーにはマジックハンドがないんだよね。
 欠陥エンクロジャーだ。

 カルビンは実験室のスプリンクラーの穴から外へ逃げ出す。
 そもそも熱を検知してスプリンクラーがいきなり水を散布してたけど、もしも実験室内に水と急激に反応する物質があったらイチコロじゃん。こんなトンマ、いまどき、田舎の消防でもやらんぞ!
 実験室の構造もトホホだ。いまどき、そこらのクラウドのサーバ・ルームでさえ、銀行の金庫室のような小部屋が二重になった構造も珍しくないわけで、どんな感染力や化学反応を起こすかわからない未知のものを扱う実験室が、この映画のようなヤワな代物で、しかも二重構造になってないなど信じられん。素人が見落としがちな給排水、換気、電源、通信などのダクトやケーブルは重要事項の一つで、ここから何かが漏れるなど、セキュリティの何たるかが分かってない。
 欠陥実験室だ。

 その後、地上との通信が途絶する。原因はカルビンが冷却剤を食べてトランスポンダが過熱したため。壊れるのはしゃあない。しかし一つのトランスポンダが壊れただけで地上と連絡がとれなくなるなど、ありえん。通信の方式なども複数用意した冗長性を持たせるのが常識のはず。
 欠陥通信システムだ。
 (実は、この映画の場合、脱出用ポッドにも地上と連絡できる機器が無かった。ありえん!でも、そこ、突っ込んじゃダメ。)

 こうした欠陥システムの数々により、クルーは苦労することになる。

 さらに追い打ちをかけるように事故が起こる。肝心なところで、デブリがぶつかるのだ。で、デブリといえば「中国、ドアホ」と連想するのが宇宙ネタの常識。僕は最後に中国人風の漁師が登場するのは、こうした皮肉をこめているのかなと思えたほど。

● 搭乗員
 途中、「宇宙から国境線は見えない」なんて台詞がある(補足参照)。これはISSのクルー6人が4つの国の出身者で構成され、それでも互いに尊敬しあい、信頼してミッションを行っていることの比喩と捉えるべきだろう。
 もしも、この映画に無理やりテーマを求めるなら、クルーの信頼感と使命感ということになるのではないかな。

 ロイは陽気なアメリカ人。ライアン・レイノルズが能天気に演ってた。
 カテリーナは責任感のある女性指揮官。オルガ・ディホヴィチナヤがチョイ渋。
 ヒューは何かとコンプレックを抱く宇宙生物学者。アリヨン・バカレが空しく。
 ショウは6人の中で一番知恵があるみたい。みんな、何か有るとすぐに、彼に意見を求めるんだよね。で、実際に何らかのアイデアで応える。信頼感抜群。真田広之がかなり光ってたぞ。
 ミランダは重大な決断をする。鋼の心を持った女性らしい。レベッカ・ファーガソンが可愛い。
 デヴィッドは400日以上も宇宙に滞在していて、地上に戻りたいとは思わず、世捨て人状態。ジェイク・ジレンホールが無難に。

 映像は見事だ。
 まずは、無重力の様子。『ゼロ・グラビティ』を見ているので驚くことはないけど、もはやこのレベルが宇宙もののスタンダードになったということだな。
 それ以上に気合を感じるのが、ISSの内装。三角形または六角形を基本として、やや狭いイメージに仕上げてる。扉の厚さや質感も、場所によって変えていて、かなりリアル感を出していたな。

● 注目
 既視感が強く、話は中途半端だし、先も読めるし、それほどわくわくするところもない。
 なお、僕はこの映画の続きが、先ほどの『The Blob』でいいんじゃないかと思ってる。きっとスティーブ・マックイーンが退治してくれるさ。

 注目は映像。
 これからの宇宙ものの映像のベンチマーク(基準点)の一つになると思うよ。


〔補足〕 宇宙から国境線は見えなかった……そうなのか?
 「宇宙から国境線は見えなかった」というのは、毛利衛さんが1992年にエンデバーのミッションから帰還後に語った言葉。名言だと思う。
 僕は毛利衛さんをリスペクトしている。であるからこそ、この言葉の意味は少し考えて受け止めないといけないと思っている。
 この言葉は、本当に国境が見えるかどうかではなく、国家を超えた国際協力のもとで宇宙開発が行われていることを踏まえ、科学技術の進歩や文明の進歩は全人類が共有するものだという意味だと解釈している。
 なので、この言葉にケチは付けたくないのだけれど、時々能天気な人がこの言葉をそのまま真に受け、宇宙開発の国際協力のすばらしさに気がつかず、宇宙に政治や領土的占有欲を持ち込んで宇宙に国境を作ろうとしている某国の愚行に気がつかない人がいるので、敢えて書こう。

 宇宙から国境は見えるのだ。

例1 ティワナ
 例えばグーグルアースをご存じだろうか? (って、よもや知らん奴などいないと思うけど)
 グーグールアースで、例えば米国とメキシコとの境を見れば、ところどころ国境線が見えるはず。具体例として、西海岸の海辺、サンディエゴ(米国)とティワナ(メキシコ)の国境に「The wall on the beach, Tijuana」が見えるはず。
 トランプが大統領候補になったとき、日本のマスコミなんぞに洗脳されず、彼の政策の良し悪しを真面目に考えたことがあれば、こんなの常識でしょ!!!

 でも、毛利さんの言葉は、肉眼では見えなかったという意味なので、以下は肉眼で見える例。

例2 鴨緑江
 例えば、鴨緑江。中国と北朝鮮の国境の川で、日本人なら誰でもニュースなどでこの川のロケ映像を見たことが有るはず。この国境線は、大河なので、宇宙からでも見える。

 でも、毛利さんの言葉は、人間が作った国境線は見えなかったという意味なので、以下は人工的なのもので、かつ肉眼で見える例。

例3 万里の長城
 万里の長城は、宇宙船から肉眼で見える数少ない人工構造物の一つだといわれる。
 これ、現代の国境線ではないけど、かつての中国と北方遊牧民族などとの国境線だよね。

 でも、毛利さんの言葉は、最近の国境線は見えなかったという意味なので、以下は近・現代に作られた人工的なもので、かつ肉眼で見える例。

例4 土地利用の境界
 例1と同様に米国とメキシコとの国境、あるいは米国とカナダとの国境などで、はっきり地表の様子が変わっている例は多い。畑で作る作物が異なるなど、土地利用の大きな違いによって、国境線がはっきりわかるケースだ。
 これって社会科の教科書に載ってなかったっけ?
 あるいは、宇宙から見た夜景では、多くの国は街が点在して明るくなっているのに、北朝鮮だけきっちり暗くなっているのを見たことないかな。これなんかも、縮尺は小さいけど、国境線が見える例だよね。

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