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zoom RSS 映画の感想文 [1113] ボヤージュ・オブ・タイム

<<   作成日時 : 2017/09/05 18:58   >>

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【ボヤージュ・オブ・タイム】
原題:Voyage of Time
製作国:米国
製作年:2016年
日本公開:2017年3月
監督:Terrence Malick(テレンス・マリック)

===== あらすじ(途中まで) =====
 宇宙が始まり、地球が誕生し、生命が生まれ、隕石で絶滅しかけ、やがて人類が生まれ、現代に至る。

===== 感想 =====

● 道元
 映画は、道元の和歌から始まる。
「世の中は
 何にたとえん水鳥の
 嘴(はし)ふる露に
 宿る月影」(*1)

 僕はいきなり面喰らってしまった。
 何故、テレンス・マリックが日本の和歌を使う?
 しかも、何故、よりによって道元を使う?
 高校で習ったとおり、道元は日本の思想家の中で超絶に難解とされる一人だ。よほど哲学の素養に自身がなければ、人前で道元を採り上げたりはしない。

 僕の疑問は半端なものではなく、映画が終わると真っ先にこの経緯を調べてみたのだが、何と公開する国のバージョンごとに監督が選んだ言葉らしい。
 ということは冒頭の言葉は国ごとに異なるわけで、一貫性を持った深遠な意味はなさそう。
 この映画、あまり意味のない言葉から始まる映画なのだ。

● ストーリー
 ストーリーのようなものはない。
 あらすじに書いたような悠久の時の流れが、断片的な言葉のナレーション付きで映され、ところどころに現代社会の映像が挟まる。
 ただし、現代の映像はあくまでも社会の一断面だけで、特にホームレスや難民や貧困層の映像が多い。何かしらの意図がありそうだなと思っていると「Love binds us togather.」みたいな言葉が流れる。
 「愛は私たちを一つに結ぶ」
 そうですか。この言葉を聞いても、僕はとりたてて感動することもなかったな。

● 映像
 この監督の場合、映像美を期待してしまうが、今回はそれほどのものでもなかった。

 古代から現代に至る映像は、火山、温泉、海、滝、都市、生物、人間などが主な被写体となるが、美しいものは少なくて、珍しいなと感じるくらい。何年もかけて自然を捉えた映画はいくつもあるが、それらと比べてとりたてて秀でるところはない。むしろところどころにCGらしきものが混ざるので、何となく中途半端感も漂う。

 また、ところどころに挟まる現代の映像は、わざと画面の幅を狭くし、露出過多にして、粗い粒度で撮っている。ドキュメンタリー風ということらしいけど、全体の印象に合ってない。

 音楽はまあまあだけど、『2001年〜』の「キリエ」のような曲が流れるときがあって、どうもオリジナリティが感じられないんだよね。

● 辛い
 かなり退屈かな。
 少なくとも隕石落下までは、かなりつらい。そこまでが退屈過ぎて、隕石落下のカットを見て「今度は『君の名は。』かよ」と思ったくらいだもんなあ……。
 ただし、そこから先はしばらくすると人類も登場するし、ちょっとだけ面白くなる。

 でも、全体を通しての感想は――もう一度観るのは辛い――だな。


(*1) 和歌の解釈
 この和歌が収録された『傘松道詠』の写真を見ると
「世中を何にたとへん水鳥の
 はしふる露にやとる月影」
 となっている。
 行をどこで区切るかも重要なのだが、道元は、和歌を書き記すときに、百人一首のように上の句の五七五と下の句の七七に分けて書くことが多いみたい。
 ただし、今回の和歌は、意味的には五七と五七七に区切るのが良さそうで、かな使いなども現代風にして、
「世の中を何に譬(たと)えん
 水鳥の嘴(はし)振る露に宿る月影」
 となりそうだ。
 ここで「影」とは「光」や「姿」のこと(広辞苑にそう出てる)で、「月影」とは月の形や姿のことだ。
 そこで歌の意味は次のようになる。
「世の中を何にたとえることができるだろうか。
 水鳥がくちばしを振ったときに飛び散る露に映る月の姿のようなものか。」
 これをどう解釈するか?
 この映画では、露は瞬間的に消えてしまうということから、世の儚さ(はかなさ)を詠ったものという解釈らしい。
 一方、飛び散る露はいくつもあって、それらすべてに同じ月の姿が映っている情景と解し、世の真理(道元なので「正しい教え」つまり「正法」というべきかな)は常に一つという解釈もあるみたい。
 難解なのだ。

画像
夕日を振り返る恐竜
『ツリー・オブ・ライフ 』の夕日を振り返る首長竜を思い出すところだ

画像
隕石
退屈のあまり『君の名は。』を思い出してしまった。

テレンス・マリックの映画の感想
 ⇒ 地獄の逃避行
 ⇒ 天国の日々
 ⇒ シン・レッド・ライン
 ⇒ ニュー・ワールド
 ⇒ ツリー・オブ・ライフ
 ⇒ トゥ・ザ・ワンダー
 ⇒ 聖杯たちの騎士 (ちょっと待ってね)
 ⇒ ボヤージュ・オブ・タイム (今回の書き込みです)

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