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zoom RSS 映画の感想文 [603] BUNGO 〜ささやかな欲望〜 告白する紳士たち

<<   作成日時 : 2013/04/29 20:59   >>

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【BUNGO 〜ささやかな欲望〜 告白する紳士たち】
公開:2012年9月

===== 概要 =====

 三つの小説を映画化したもの。

1 鮨
 原作:岡本かの子
 監督:関根光才
 あらすじ:
 寿司屋の孫娘ともよは、最近、常連になった中年の客、湊のことが何となく気になっていた。町でばったり出会ったとき、湊から幼い頃の鮨の思い出を聞かされる。

2 握った手
 原作:坂口安吾
 監督:山下敦弘
 あらすじ:
 大学生の松尾は、映画館で隣に座った見知らぬ女の手を突然握ってしまった。ところが相手は手を握り返してくる。それから二人は付き合うようになった。その女は綾子というウェイトレスで、男遊びが激しいらしい。松尾は、女はみんな同じなのか確かめたくなって、クラスの生真面目な女子、水木の手をいきなり握ってみた。

3 幸福の彼方
 原作:林芙美子
 監督:谷口正晃
 あらすじ:
 昭和14年、絹子と信一はお見合い結婚をした。
 信一は、絹子がお見合いの席で自分の言葉に大笑いしたことが気になっていた。実は、食べ物の好みがウドンで、本当は金持ちに成りたかったというのが、絹子の子供のころと同じだったからだ。
 それを聞いた信一は、自分には子供がいて、出征するときに里親に出したきりだと絹子に打ち明けた。一方、絹子の親は行商人で、子供のころ同じように叔母の家に置き去りにされたという過去を持っていた。
 絹子は、子供に会いに行くべきだと信一に強く迫った。

===== 感想 =====

● 第1話 鮨
 話そのものは、あまり面白くない。寿司屋の若い娘が中年の常連客にちょっと惹かれるという「危なさ」はあるものの、結局は健全なまま。謎に見えたその男の過去も、ひらたくいえば過剰に神経質で、母の作った鮨ぐらいしか喉を通らなかったというもの。
 だから何?――なのだ。
 ともよ役は橋本愛、あまりきれいに撮れていない。湊役はリリー・フランキー、時代もののやや風変わりなおっさんという感じは合ってるけど、だから何?――なのだ。
 この二人が空き地に座って話し合うような場面が多く、正直言ってこれが何の魅力もない芝居だ。やはり――だから何?

 全体に、ビロンと間延びしたCMをつないだような雰囲気かな。

● 第2話 握った手
 原作者が坂口安吾ということで、どうせちょっとグロで、すごく理屈っぽいネタだろうと思って観始めた。こういう予見はあまり持つものではないが、この映画はまさにドンピシャの予想どおり。
 女の手を握った松尾の手は獣のようにグロくなってしまう。松尾が水木をくどく理由や、二人の会話などは、やれやれと思うほど理屈っぽい。完全に昔のお話だなという感じ。
 それにしても理屈っぽすぎたようで、成海璃子をもってしても、水木の理屈っぽい長台詞をうまくこなすことはできないみたい。松夫役の山田孝之も、あまり話に深入りせずに無難に流してるといった感じ。

 映像の背景の多くは神戸のレトロな建物らしい。時代を描きたいのかもしれないけれど、観光用に保存・公開するレトロな建物など最近は珍しくもないわけで、中途半端なロケが逆に偽物っぽい感じ。
 中途半端に――いや、あざとい感じにノスタルジックな雰囲気だな。

 なお、終始、サティの『グノシエンヌ No.1』が流れるのだが、僕は『その男、凶暴につき』(1989年)で、北野たけしが白竜のナイフを「握った手」を思い出していた。

● 第3話 幸福の彼方
 このDVD、困ったちゃんだなと思っていると、三話めの本作品は傑作。それも、かなり嬉しくなるような出来栄えだ。

 うどんが好きで金持ち願望。子供を置き去りにした過去と、親に置き去りにされた過去。信一と絹子は不思議な共通項を持っていた。しかも二人は、お見合いの席で互いに一目惚れをしたらしい。結ばれるべくして結ばれた二人。しかし、本当の夫婦になるには二人にとって裏腹の悲しみを乗り越えなければならなかった。
 話の構成や展開はすごく見事。各場面の設定や台詞などの脚本もすごくいい。手風琴(アコーディオン)、ピアノ、チェロなどによるBGMも、とても心地良い。

 一番驚いたのは、主役の絹子を演じた波瑠だ。
 これまでは美人だけどちょっときつそうという印象だったけど、この作品では驚くほど魅力的だし、芝居も巧い。お見合いのときの何を考えているのか判らないような年頃の娘らしい仕種、結婚を決めたときに跳ねるように立ち去る様子、その直後に池の水面の反射を顔に受けて迷いが消えていく笑顔、信一の告白を聞くときの緊張した不安な表情、そして列車の中での行商人の真似など、どれも見事。
 特に2度の涙――1度めは駅のホームで悲しい過去の思い出に泣き、2度めは列車の中で希望に満ちた未来に泣く――というのは、ここ最近に観た映画の中でトップクラスだろう。
 難は着物姿、特に歩くときに日本的な風情が薄いことかな。襟をあまり抜かず(着付けのスタッフの腕が超悪いのでしょうがないけど、あれでは下品だ)、背筋を伸ばし、あごを引いて、ほのかな色香を漂わせつつ、凛としてほしいもの。

 脇では行商の家族が面白い。
 手風琴を弾く行商の男は、かつての『たま』の柳原陽一郎。合ってるなあ〜。
 その女房を平田敦子。絹子が言う「よく肥えたかあちゃん」の代表のようなキャラクターだ。
 息子は山崎光。ワルガキそうな地黒な顔に坊主頭で、いかにもレトロな子供という雰囲気満点。所属事務所のプロフィールの写真は、いまどきのかわいい男の子なのにね。

 映像も見やすい。ただし衣裳、特に着物の着付けは最悪。
 この話は良品、いや優品。短編なので、きっと何十回と見直すことになりそうだ。


シリーズの感想
 ⇒ BUNGO 〜ささやかな欲望〜 見つめられる淑女たち

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画像
絹子(ごくり……?)

画像
絹子(よく肥えたかあちゃんになる!)

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