ワールドカップ2018 ロシア大会 (その68) クロアチアvsフランス 感想

決勝
2018.07.15 18:00 (日本時間:24:00) ルジニキ・スタジアム(モスクワ)
クロアチア - フランス
ベリシッチ(前28), マンジュキッチ(後24)
OG(前18),グリーズマン (前38), ポグバ(後14), エムバペ(後20)

● 布陣
 クロアチアは、準決勝とメンバーは同じで、中盤の並びを少し変えてきました。4-2-3-1ですが、序盤はブルサリコの位置が異様に高く、3-2-4-1のような並びになっている時間も多いようでした。

        17 マンジュキッチ
 4 ベリシッチ  10 モドリッチ  18 レビッチ
    7 ラキティッチ   11 ブロゾビッチ
3 ストリニッチ 21 ビダ   6 ロブレン   2 ブルサリコ
         23 スバシッチ

 フランスは、メンバーも並びも準決勝とまったく同じ、4-2-3-1。こちらは、終盤の十数分ほどは、4-4-2にシステム変更します。

             9 ジルー
   14 マテュイディ 7 グリーズマン 10 エムバペ
         13 カンテ   6 ポグバ
21 エルナンデス 5 ウンティティ 4 バラン 2 パバール
             1 ロリス

● 前半
 試合開始と同時にクロアチアは前からプレスをかけ、戦いの主導権を取ろうとします。しかし、中心となるモドリッチがつねにカンテにケアされ、しかも左足が万全ではないらしく、キレのある効果的な働きができません。一方、フランスも攻撃の中心となるグリーズマンやエムバペにほとんどボールが渡りません。
 序盤は、完全にクロアチア優勢。

 ところが15分ころからフランスが押し返すようになり、18分に先制点が入ります。
 PA右手前のFKで、グリーズマンの蹴ったボールがゴール前の密集の中のマンジュキッチの頭に当たり、ゴール右隅に入りました。
 クロアチアのオウンゴール。

 今日のクロアチアは、モドリッチを除き、動きが速く運動量が豊富です。10分後には同点に追い付きました。
 28分、クロアチアはPA左手前のFKを得ます。モドリッチは、大外の右スペースに少しタイミングを遅らせて上がってきたブルサリコにパス。フランスの守備が少し混乱する中、マンジュキッチの頭、ビダの足とつないで、DFラインの手前で前向きにボールを受けたベリシッチが、浮き球を右足でコントロールし、左足で強烈なボレーシュートを打ちこみました。
 クロアチアの選手は、誰もがシュートが上手い。パンチ力があって正確なだけでなく、シュート体勢に入る準備動作――トラップやボール・コントロール、軸足の踏み込みなど――も完璧。まさに教科書的で、お手本にしたくなる質の高さです。
 それを象徴するようなゴールでした。

 さらにその10分後、今度はフランスに得点が入ります。
 38分、右CKでベリシッチの手にボールが当たり、VARでハンドの判定となってPK。グリーズマンが冷静に決めました。

 フランス1点リードでハーフタイムを迎えます。

● 後半
 後半立ち上がりも、ボールの支配率などはクロアチアが優勢です。フランスはどうも中盤が機能しません。そこで、監督のデシャンは大胆な交代を行いました。
 10分にカンテを下げてヌゾンジを入れたのです。
 解説の山本や藤田は、これでモドリッチが自由にやりだすことを危惧し、まるで愚策であるかのような言いぶり。しかし、ヌゾンジだってボランチとしての守備能力は高い。彼が前に立ちはだかるとモドリッチは何もできません。
 というより、モドリッチは足の状態が悪そうなのに気がつかないのかな?
 こちらは、テレビ越しに見ていても切れの悪さを感じたというのに。
 おそらくデシャンは、今日のモドリッチ、今日のカンテ、今日のヌゾンジ、この三人の三通りの状態を比較考慮したうえで、ヌゾンジ交代のほうが効果的と判断したのでしょう。従来の実績などに縛られ、選手のネームバリューに影響され、目の前の状況をきちんと見ようとしない人からは、「デシャンは愚か」と映ったようですが、実はデシャンのほうが数段上ということです。(*1)

 中盤が落ち着いたフランスは、たたみかけるように追加点を入れます。

 14分、ポグバが自陣から右へ長いパスを入れ、そのまま守備をヌゾンジに任せて上がります。
 エムバペが右の深い位置でボールに追いつき、グリーズマンを経由して、駆け上がってきたボグバへボールが戻ります。ボグバは一度シュートをDFに当て、跳ね返ってきたボールを左足で再度シュート。ゴールとなりました。

 20分、エルナンデスがドリブルで粘って左ライン際を破り、ゴール正面で待つエムバペへパス。エムバペはツータッチしてから右足でミドルシュートを決めました。
 このときのエムバペのプレーは特筆ものです。
 サッカーを見慣れていないと、ただ、ツータッチしてからのミドルシュートにしか見えません。ところがそのレベルがものすごく高質。
 シュートする瞬間に上体を右に向け、軸足である左足のつま先も右に向けます。これによりGKはファー側をケアすることになります。そこから軸足と交差するように蹴り足の右足を振り抜き、ミドルをニア側に決めました。
 一連の動作はものすごく速く、また軸足を踏み込むときに体重移動などもほとんどありません。
 かつては南米の選手がよくやってたキックですよね。最近は少ないかな。例えば、ネイマールは蹴る方向に軸足を向けて踏み込むのがすごくうまいけど、軸足と違う方向に蹴るときの精度はあまり高くはありません。
 実は踏み込んでヘロヘロの弾道のキックなら似たようなシュートを小学生でも蹴ります。しかし、これほど素早い動作で、パンチ力があって正確なキックとなると、やはりただ者ではない。
 天才。
 見た目は地味でも今大会のベストゴールの一つです。

 などと感心しているときに、とんでもない凡ミス発生。
 24分、GKのロリスがバックパスを受け、寄せてきたマンジュキッチを引きつけてフェイントでかわそうとします。ところがマンジュキッチの右足につっかけられたボールがそのままゴールへ。会場の空気がどっちらけになるようなミスでした。
 解説の山本は「奇跡的なこと」と言っていたような……。

 その後もクロアチアは攻勢を仕掛けます。しかし、頼みのモドリッチがもう一つ機能しません。
 36分になると、フランスはジルーに代えてフェキルを入れ、エムバペとのツートップの4-4-2にシステム変更します。そして4-4のブロックを作って引き籠り。
 守備的な名選手だったデシャンが作る守備ブロックは強固で、クロアチアは崩す糸口すらつかめぬまま試合終了となりました。

● デシャン
 この試合のプレーの中心はグリーズマンですね。エムバペの天才技やベリシッチのお手本のようなゴールも特筆ものですが、やはりゲームの流れを的確にとらえ、攻撃でも守備でもセンスの高さを見せつけたのはグリーズマンでした。

 しかし、試合の中心となると、デシャンというべきでしょう。
 選手交代やシステム変更などの采配は見事。というか、そもそもこれほどのチームを準備したという時点で、絶賛ものです。

 なお、本日のお笑い担当はマンジュキッチでいいかな。
 すべての得点は、前半18分のオウンゴールに始り、後半24分の「奇跡」で締めくくられたわけですから。

(*1) 日本の指導者は交代を恐れる傾向があります。
 しかし、これはとんでもないこと。
 交代して不安になるような選手を控えにすべきではない――この原則ができてない。
 よく「チームワークが大事で誰が出てもいいように準備する」なんてことを言いますが、交代をおそれるのは、それが口先だけということです。
 選手交代で迷ったら代えろ――これも原則。これで失敗するなら、そもそも自分の事前の準備が悪かったということです。

画像
デシャン「ばんじゃーい!」 (って言ってるのかな?)

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