映画の感想文 [1228] 白蛇伝

===== 前口上 =====
 いずれ子供のころに見た東映アニメの感想を書こうと思っていたのですが、何とその一つの『白蛇伝』が、今年の朝ドラで描かれているエピソードの元ネタになっています。
 懐かしさのあまり、本棚からDVDを引っ張り出して観てしまいました。

 ついでに、当時のほかのアニメ作品も感想を書こうと思いますが、いつになったら完結することやら。
 僕がジジイとはいっても、公開と同時に劇場で観た記憶があるのは『西遊記』以降。『白蛇伝』と『少年猿飛佐助』は公開後、しばらくしてどこかで観たことになりますが、それが劇場か、学校の映画鑑賞会のような場か、あるいはテレビか、今となっては定かではありません。
 なお、これらの作品の中で、アニメ作品としてベストと思うのは『西遊記』。
 一方、個人的な事情や思い入れなどもあって、一番好きなのは『ガリバーの宇宙旅行』。それに加えて『わんわん忠臣蔵』と『少年ジャックと魔法使い』も、子供のころのマル秘な思い出と絡んで、忘れることができない作品です。

【白蛇伝】
製作年:1958年
公開:1958年10月
監督:藪下泰司
声優:森繁久彌、宮城まり子

===== あらすじ(途中まで) =====
 中国西湖の畔で、許仙(しゅうせん)という若者が、パンダの「パンダ」とレッサーパンダの「ミミィ」と一緒に暮らしていた。
 ある日、笛を吹いていると、どこからともなく美しい胡弓の音色が聞こえてきた。その音に誘われるように小青(しゃおちん)という少女と出会い、誘われるまま彼女の主の白娘(ぱいにゃん)という美しい女性と知り合った。
 実は白娘は、許仙が少年時代に飼っていた白蛇が変身したもので、召使の小青は魚の精だった。しかし、街には強い法力を持つ僧侶の法海(ほっかい)がいて、怪しい妖術を警戒しているため、白娘や小青は身を潜めるようにしていなければならなかった。
 許仙と白娘は出会ってすぐに惹かれあうようになった。しかし、小青、パンダとミミィのいたずらがもとで、許仙は宝物殿の宝を盗んだと疑われ、官吏に捕えられて蘇州へ追放されることになった。

===== 感想 =====

● カラー長編アニメ
 上映時間は79分で、カラーの長編アニメとしては日本最初の作品とのこと。
 映画の冒頭は、影絵のようなカットで状況説明をするなど、尺を稼ぎつつアニメそのものの時間節約を図ってる。創造的な仕事なのに労働集約型という、アニメ製作における最大の矛盾は、今も昔も変わらないみたいだ。

 話の後半は蘇州に移り、流罪となりながらも白娘への思いが消えない許仙の苦悩や、彼の後を追うパンダとミミィの活躍、白娘と法海との妖術を使った戦いへと展開していく。終盤は法海の寺やその周りが舞台となり、白娘の直向きな思いが描かれる。

 この話に極悪人は登場しない。せいぜい豚一味のコソ泥や、新入りの給金をカツアゲする恐い先輩がいる程度。
 話の中身は勧善懲悪ではなく、一途な純愛なのだ。

 日本最初のカラー長編アニメ映画は、小さな子供たちだけに見せようとしたものではなく、もう少し年齢層の高い観客をターゲットとしていたということだ。

● 表情の表現
 おもしろいのは、人間と動物とで描き方が異なるように感じるところ。
 人間は動きが粗いのに対し、パンダやレッサーパンダなどは比較的動きが滑らか。

 これは、おそらくキャラの感情表現の関係ではないかな。

 このアニメでは、喜怒哀楽などの人間の顔の感情表現もかなりラフな動きになっていて、それに合わせて体の動きもラフにしないとバランスがとれない。
 ずっと後の時代になって、例えば『トトロ』で五月が泣くシーンなど、かなりリアルな表情を描こうとして、どうにも気持ち悪い仕上がりになってることがある。アニメのデフォルメされた顔で、喜怒哀楽だけをリアルに描くのは、かなり難しいということだろう。そのため、表情の変化はラフな動きにせざるを得ないのではないかな。

 逆に言えば、デフォルメされた顔によるわずかな動きの中で、どれだけキャラの思いや感情を表現するか――そこがアニメーターの腕の見せ所ということになる。
 ちなみに朝ドラで、貫地谷が同僚にくってかかるシーンがあったけど、まさにこういう点を突いていたみたい。

● 声優
 声の出演は、森繁久彌と宮城まり子だけ。二人が何役もやっている。(*1)

 森繁は、後の乙事主(オッコトヌシ)。野太い声が特徴。
 一番耳に残るのは、パンダが太鼓で遊ぶときの歌。貫禄ですな。
 一方、法界の声の時は、なるべく力強さを抑えるようにしたみたい。森繁が本気で怒鳴り声をあげたら、映画館のチビッコはみんな泣き出しちまうだろうからね。

 一方の宮城まり子は、幸薄そうな少女を思わせる、か細い声が特徴。
 小青のいたずらっぽい声がすごく似合ってた。
 こちらも、白娘の声の時は、あまり声に艶を出さないようにしていたみたい。蛇の化身が色っぽ過ぎては、すっかりドロドロな印象になってしまうからだろう。

 この二人がラブシーンのような会話をしても、もう一つ甘いムードにはならない。映画の終盤近くまで、悲恋のようなムードを高めたかったのかもね。

● お薦め
 一つ一つの場面のテンポはかなりゆっくりしていて、最近の映画の感覚からすると、かなりまどろっこしく感じる。だけど、子供のころは観ながらわくわくしてたな。
 いまとなっては歴史的な意義が高い作品。
 一度は観るべきだよ。


(*1) ナレーションは別人のように聞こえるけど、クレジットはないようだ。

画像

東映アニメ映画(+α)の感想
 ⇒ 白蛇伝 (今回の書き込みです)
 ⇒ 少年猿飛佐助 (そのうち書きます)
 ⇒ 西遊記 (そのうち書きます)
 ⇒ 安寿と厨子王丸 (そのうち書きます)
 ⇒ アラビアンナイト シンドバッドの冒険 (そのうち書きます)
 ⇒ わんぱく王子の大蛇退治 (そのうち書きます)
 ⇒ わんわん忠臣蔵 (そのうち書きます)
 ⇒ ガリバーの宇宙旅行 (そのうち書きます)
 ⇒ 大忍術映画ワタリ (アニメじゃないけど……。そのうち書きます)
 ⇒ 少年ジャックと魔法使い (そのうち書きます)
 ⇒ 空飛ぶゆうれい船 (そのうち書きます)

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